トゥルカナ湖の水位はこの10年で急上昇し、沿岸集落の住居・学校・道路を次々と水没させている。2018年にはユネスコの「危機遺産」リストに登録された。
なぜトゥルカナ湖で水位上昇が止まらないのか
気候変動と地殻変動の複合要因が、湖への流入量を増加させているためだ。乾燥地帯でありながら蒸発量を超える水が流れ込み、湖は拡大を続けている。
トゥルカナ湖はケニア北部に位置する世界最大の永久砂漠湖で、数十万人の生活を支えてきた。しかし近年の水位上昇は、住居や牧草地だけでなく、道路や学校、さらには祖先の埋葬地まで飲み込んだ。かつて本土と陸続きだったコモテ村は、約600メートルの水域で隔てられた島になった。わずか10年前のことだ。
NPRの現地取材によると、湖の西岸にある主要漁業集落カロコルでは、住民がすでに3度の移転を強いられている。水没した建物はワニの繁殖地と化し、子どもたちが通う学校の周囲にも危険が迫る。
漁獲量が25分の1に激減した背景
水位上昇だけでなく、ケニア北部の持続的な干ばつが漁業資源を圧迫している。牧畜民が生計を失い、漁業に転向したことで競争が激化した。
71歳のエルモロの長老アルフレッド・レンクトゥクは、かつて113キロを超える大漁が日常だったと語る。現在、漁師が持ち帰れるのは5キロ程度だ。カバはほぼ絶滅し、かつて約70キロにわたって漁ができた水域は、押し寄せた新規参入者で飽和している。
2018年のユネスコ危機遺産登録以降も状況は悪化の一途をたどる。観光業も壊滅的で、湖岸のロッジは敷地の95%を失い、ほぼ全従業員を解雇した。
湖とともに生まれた民族が直面する選択
エルモロの人々にとって、トゥルカナ湖は生計の基盤であると同時に文化的アイデンティティそのものだ。彼らの起源神話では「民族と湖は同時に生まれ、どちらも相手なしには存在したことがない」とされる。
現在わずか数百人のエルモロは、アフリカで最も小規模かつ周縁化された先住民グループの一つだ。コモテ島の子どもたちは毎朝、片道100ケニアシリング(約75セント)を払ってボートで本土の学校に通う。政府は数カ月ごとに米と豆を届け、逆浸透膜の淡水化装置を設置したが、レンクトゥクは「まったく足りない」と言う。
衛星データと地域連携が開く可能性
トゥルカナ湖の変動を追跡する衛星観測技術は年々精度を上げており、水位予測と早期警報の仕組みが構築されつつある。正確なデータがあれば、集落移転の計画を事前に立てることも、漁業資源の管理を科学的に行うことも可能になる。
エルモロの若い世代は、伝統的な湖との共生知を保ちながら、外部の支援や技術を取り入れる道を模索している。世界最大の砂漠湖が膨張を続ける中で、数千年の歴史を持つ湖畔の暮らしが次の形を見つけられるかどうかは、データと伝統知の接点にかかっているのかもしれない。





