朝6時の袋小路に現れた無人の車列
ウェイモは2025年6月にアトランタでロボタクシーサービスを開始し、市内で約100台を運用している。異変が起きたのは約2カ月前だ。北西部の住宅街に、乗客のいないウェイモ車両がぽつぽつと姿を見せるようになった。
状況はここ数週間で急激に悪化する。地元テレビ局WSB-TVの取材に応じた住民によれば、ある朝は午前6時から7時のわずか1時間に約50台が通過したという。「うちの周辺の袋小路ほぼすべてに来ている」と住民は語る。
子どもがスクールバスに乗る時間帯と重なるため、安全への懸念も大きい。「小さな子どもやペットがいる家庭ばかりだ。乗客もいないのに住宅街の袋小路に入ってくる必要はないはずだ」と住民は訴えた。
子ども型の人形で封鎖したら、8台が立ち往生した
住民は「子どもが遊んでいます」と書かれたプラスチック製の人形を道路に置き、ウェイモの進入を阻もうとした。結果は皮肉なものになる。人形を障害物と認識した車両が次々と停車し、最大8台が袋小路でUターンの方法を計算し続ける膠着状態に陥った。
この光景はSNSで瞬く間に話題になった。「車が独自の宗教を発明しちゃダメなのか」「ロボットが趣味を持って何が悪い」とジョークが飛び交う一方、「単に都市を監視しているだけだ」という陰謀論めいた反応も出た。笑いと不安が入り混じるコメント群は、自動運転車への社会感情の複雑さをよく映している。
Fast Companyの取材に対し、ウェイモの広報担当者は「このルーティング動作はすでに対処した」と回答した。「良き隣人であることに尽力する」とも強調したが、なぜこの住宅街が選ばれたのかについての具体的な説明は出ていない。
ロボタクシーの「待機場所問題」にルールが動き出す
ウェイモは自社拠点で車両を整備するほか、乗車の合間には路上駐車を探すようにもプログラムされている。同社プロダクト責任者のヴィシャイ・ニハラニによれば、「車両はアイドル状態のとき、近くの駐車スポットか需要の高いエリアへの移動を選択する」仕組みだという。
だがアトランタ北西部の閑静な住宅街は、「需要の高いエリア」とは言いがたい。人間のタクシー運転手なら客のいない時間帯は繁華街で待機するか、休憩を取るだろう。自動運転車のアルゴリズムには、そうした判断の「常識」が組み込まれていなかった。
ウェイモは全米で週50万回以上の乗車を提供しており、今回はルーティングのバグとして修正可能な範囲だろう。だがこの一件は、ロボタクシーの待機・巡回に関する都市ルールの不在も浮き彫りにした。サンフランシスコやフェニックスなど先行都市の運用知見が蓄積されるなか、住宅街への進入制限や待機エリアの指定が具体化する余地は十分にある。プラスチックの子ども人形に行く手を阻まれ、袋小路で8台が立ち往生した朝の光景が、都市と自動運転車の新しい共存ルールを前に動かすかもしれない。





