数百万ドルの買収が化けた
Wordleは2021年、ソフトウェア開発者のジョシュ・ウォードルが作った5文字の単語当てゲームだ。1日1問、6回以内に正解する——そのシンプルさが口コミで広がり、公開から数カ月で30万人のユーザーを集めた。
翌年、ニューヨーク・タイムズ(NYT)がWordleを100万ドル台で買収する。当時この価格が妥当かどうかで意見は割れたが、結果的に桁違いのリターンを生んだと言えるだろう。Fast Companyの報道によれば、NYT Gamesの2025年の総プレイ回数は112億回に上る。Mini Crosswordだけで14億回、Connectionsは16億回、Strandsは15億回に達した。毎週のアクティブユーザーの半数以上が1日に複数のパズルを解き、4分の1は4種類以上をプレイしているという。
ゲームが牽引するデジタル購読
NYTにとってゲームは娯楽コンテンツの添え物ではない。新規デジタル購読を呼び込む最前線だ。
2026年第1四半期の決算では、デジタル専用購読収入が前年同期比16.1%増を記録した。この購読にはニュース本体のほか、The Athletic、料理、Wirecutter(製品レビュー)、そしてGamesが含まれる。ゲームセクションが購読獲得の入り口として機能していることを、NYT自身が決算資料で示している。
従来の新聞ビジネスは「良質な記事で読者を引きつけ、広告と購読料で稼ぐ」モデルだった。NYTはそこに「毎朝の習慣」という粘着性を加えた。Wordleを解いてからニュースを読む——そんなルーティンが定着すれば、解約率は自然と下がる。ゲームは読者をつなぎとめる接着剤として機能しているようだ。
Wordleがゴールデンタイムへ
NYTとNBCが今回発表したのは、Wordleを原作とするゲーム番組の共同制作だ。ユニバーサル・テレビジョン・オルタナティブ・スタジオ、ジミー・ファロンの制作会社Electric Hot Dog、NYTの三者が制作を担う。
番組ではチーム対抗で5文字のパズルに挑み、スピードと頭脳で賞金を競うという。Wordleの書体と配色をそのまま再現する予定で、放送日は未定だが、撮影はこの夏に行われる。司会はNBCの朝の看板番組「Today」のサヴァンナ・ガスリーが務める。
テレビの単語当て番組自体は「Wheel of Fortune」や「Lingo」など数十年の歴史がある定番ジャンルだ。だがWordleには、すでに数千万人がルールを体で覚えているという圧倒的な優位がある。説明不要でいきなり盛り上がれる番組は、視聴者との距離が最初から近い。
パズルがメディアの壁を越える
NYTが大手放送局のゴールデンタイム番組に自社ブランドを載せるのは、今回が初めてだ。新聞社がテレビのエンタメ番組を共同制作するという構図は、数年前なら奇妙に聞こえただろう。
「Wordleはすでにソーシャルで共有的な体験になっている」と、NYTの映画・TV担当エグゼクティブプロデューサーのケイトリン・ローパーはFast Companyの取材で語った。「人々はただプレイするだけでなく、結果を比較し、一緒に解く。その体験をスクリーン上で再現できる基盤があった」。
毎朝の5文字が、購読を支え、テレビ番組を生み、コミュニティを広げる。Wordleの「次の一手」のキャスティングは、5月29日まで受付中だ。





