5億人が観た「進化の物語」
1976年に制作が始まった『Life on Earth』は、完成までに3年以上を要した。40カ国を巡り、600種以上の生物を撮影したこのシリーズは、地球上の進化の全史をテレビで語るという、当時誰も手をつけていなかった挑戦だ。
撮影にはキヤノンの新型レンズやコダックの新しいカラーフィルムが投入され、微速度撮影やマクロ撮影の技法も実験的に取り入れられた。NPRのレビューによると、1982年にPBSで初放送されると全世界で約5億人が視聴したという。テレビ自然番組の歴史を書き換えた作品だ。
ゴリラの親子と人間の銃声
新ドキュメンタリーの中でも特に印象的なのは、アッテンボローのキャリアで最も有名なシーンの舞台裏だろう。ルワンダでの撮影中、彼は母ゴリラとその子どもたちから慎重に距離を保ち、人間の「ものを掴める親指」の重要性について語ろうとしていた。すると母ゴリラが彼の顔を覗き込むように近づき、赤ちゃんゴリラたちが背中によじ登り始める。台本は吹き飛んだが、テレビ史に残る瞬間が生まれた。
しかし、撮影で最も危険だったのは野生動物ではなかった。密猟者や兵士との遭遇、ルワンダでの銃撃、サダム・フセイン政権下のイラクでの投獄の脅し——制作チームが直面したリスクの大半は人間によるものだったという。きらめく自然映像の裏には、命がけの取材が隠されていた。
上映室で輝く100歳の好奇心
新作『Life on Earth: Attenborough's Greatest Adventure』では、100歳のアッテンボローが上映室で50年前の自身の映像を観る姿が映し出される。画面を見つめる表情は誇りと喜びに満ちているという。
1950年代にBBCの『Zoo Quest』で初めてカメラの前に立って以来、アッテンボローは70年以上にわたり自然界を映し続けてきた。途中でBBCの管理職に転じ、ケネス・クラークの名シリーズ『Civilisation』を企画するなど制作者としても手腕を発揮したが、結局はデスクを離れてフィールドに戻っている。「私たちがやっていないことは何か、なぜやっていないのか——それを問うのが責任だった」と、1991年のインタビューで語っていた。
今年は最新シリーズ『Ocean with David Attenborough』も放送中だ。上映室のスクリーンに映る50年前のルワンダの森で、ゴリラの赤ちゃんに背中をよじ登られている若き日の自分を、100歳のアッテンボローは満面の笑みで見つめているという。

