2026/05/25
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バウハウス創設者の自邸トイレに300人が応募、コンペ勝者の答えは「素材」

バウハウス創設者の自邸トイレに300人が応募、コンペ勝者の答えは「素材」

年間4,000人が仮設トイレを使う名建築

ヴァルター・グロピウスは、バウハウス(1919-1933年)の創設者として20世紀のデザインと建築を根底から変えた人物だ。彼が1938年に自ら設計した自邸は、マサチューセッツ州にあり、現在は非営利団体Historic New Englandが一般公開している。ニューイングランド地方の歴史的建造物127件を管理するこの団体にとって、グロピウス邸は象徴的な存在だろう。

だが、この名建築には長年の悩みがあった。建物の老朽化のため敷地内のトイレを来場者に開放できず、年間約4,000人の訪問者が頼れるのは、ビジターセンター脇に置かれた仮設トイレ1基だけだったという。ヴィン・チポラCEOは「やや緊急の問題だと認識している」と語る。

2025年秋、Historic New Englandはこの課題をデザインの力で解決しようと、世界中のデザイナーに向けたコンペを開催した。条件は、バウハウスの設計原則を反映し、バリアフリーに対応し、トイレ2基と洗面台2基を備えること。約300人の応募が集まり、2026年5月7日に勝者が発表された

ガレージの設計図から生まれた「静かなトイレ」

勝者のイザベル・シュトラウスは、ハーバード大学デザイン大学院出身で、現在はスミス大学で建築学の助教を務める。グロピウス邸には以前から足を運んでいたが、コンペの存在を知ったのは昨年、建築家の夫と近隣のウォールデン池へ自転車で出かけたときだった。もともと応募するつもりだった夫が多忙で断念し、「じゃあ私がやってみる」と手を挙げたという。

シュトラウスがまず手に取ったのは、グロピウス自身が描いたガレージの設計図だった。彼女のトイレは、このガレージとほぼ同じ寸法で、約1メートル横に「現代的な鏡像」のように配置される。ほぼ正方形の建物は中央で二分され、左右対称の2室が並ぶ。レイアウトの着想源は「古典的な屋外トイレの類型」だと本人は語るが、似ているのは配置だけだ。

設計の核は素材の選択にある。外壁にはグロピウス邸の基礎と同じ野石(フィールドストーン)を使い、欄間窓にはオリジナルと同じリップルガラスを採用した。個室の白いタイルも、グロピウス邸バスルームのタイルを再現したものだ。建物全体が敷地の自然環境に溶け込むよう設計されており、チポラCEOはFast Companyの取材に対し「静かで、自己主張しない。敷地の文脈にさりげなく収まっている」と評価する。

「普通の素材」を美しくするバウハウスの思想

Historic New Englandは今後数年以内に着工し、仮設トイレの時代を終わらせる計画だという。

シュトラウス自身は、自らの設計にバウハウスの精神をこう読み込む。「高級ではない普通の素材や工業素材を、丁寧な設計によって美しく機能的なものに引き上げる。それを誰もが使えるようにすることが、バウハウスデザインの本質だと思います」。

バウハウスの根幹にあるのは「良いデザインは特権ではなく、すべての人のためにある」という考え方だ。公衆トイレという最も日常的な空間で、野石とリップルガラスと白タイルが100年前の思想を静かに再現するとしたら、デザインの射程はまだまだ広いのかもしれない。