「暴動へようこそ」が会場を席巻した夜
5月16日、ウィーンで開催されたユーロビジョン・ソング・コンテスト第70回決勝で、ブルガリア代表ダラの「Bangaranga」が優勝を果たした。NPRの報道によると、ブルガリアは事前の優勝候補には入っておらず、この結果は多くの関係者を驚かせたという。
「Welcome to the riot!(暴動へようこそ!)」というリフレインと弾むようなビートが、25カ国の競合を押しのけた。NPRの音楽評論家グレン・ウェルドンはこの曲を「狂おしいほどキャッチーなポップ」と評し、「深く、奥深く、揺るぎないグルーヴ感」を称えている。クリスタル・マイクロフォン(優勝トロフィー)を手にしたダラは「Oh my god!」と叫んだ。70年の歴史でブルガリア初の頂点だ。
5カ国ボイコットと「二重基準」批判
華やかなステージの裏側では、政治的な緊張が渦巻いていた。アイスランド、アイルランド、オランダ、スロベニア、スペインの5カ国が、2025年9月から12月にかけて出場を辞退した。ガザでの戦争が続く中、主催者の欧州放送連合(EBU)がイスラエルの参加を認めたことへの抗議だ。
決勝ではイスラエル代表ノアム・ベッタンがフランス語、ヘブライ語、英語で恋の別れを歌い、2位に入った。準決勝では「ジェノサイドを止めろ」という声が飛ぶ場面もあったが、決勝では目立ったブーイングはなかったという。ベッタン本人は事前に、ヤジの中でも歌えるよう練習を重ねていたと報じられている。
一方、ロシアは2022年のウクライナ全面侵攻を受けて無期限の出場停止処分を受けたままだ。EBU副事務局長はイスラエルの公共放送KANが政府から独立した機関であるのに対し、ロシアの国営放送VGTRKは政府直轄だと説明した。だがスペインのペドロ・サンチェス首相はSNSで「二重基準だ」と批判しており、この論争は今後も尾を引くだろう。
1億6,600万人が見守る祭典の求心力
政治的分断にもかかわらず、ユーロビジョンの吸引力は衰えていない。昨年バーゼルで開催された大会は37市場で1億6,600万人が視聴し、過去最高を記録した。5カ国がボイコットした今年も25カ国が舞台に立ち、数億人が同じパフォーマンスを画面越しに共有している。
「分断されがちな世界で、私たちは音楽によって一つになれる」と、司会のミヒャエル・オストロフスキーは閉会の辞で語った。優勝候補でもなかったブルガリアの歌手が「暴動へようこそ」と叫びながらクリスタル・マイクロフォンを掲げたこの夜——ユーロビジョンは70回目にして、まだ誰も結末を予測できない祭典であり続けている。

