2026/06/04
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2026年6月のおすすめ洋書10冊をNPRが厳選。本だけで世界を旅する夏が始まる

2026年6月のおすすめ洋書10冊をNPRが厳選。本だけで世界を旅する夏が始まる

米公共ラジオ局NPRが2026年6月の注目新刊として10冊を選出した。舞台は19世紀アイルランドから1870年代のニューヨーク、近未来の韓国まで、時代も大陸も横断する。

6月の新刊海外小説は「歴史の生存者」から始まる

今月の注目作のうち2冊は、歴史の大波を生き延びた人々の物語だ。教科書が語るのは数字と結末だが、この2冊は「そのあとも生き続けた人間」に焦点を当てる。

北アイルランド出身の作家マギー・オファレルの『Land』は、19世紀半ばの大飢饉に見舞われたアイルランドが舞台だ。人口の約4分の1が失われたこの災禍で、死なず去りもしなかった夫婦──トマスとフィナ──の人生を追う。オファレルは歴史小説『Hamnet』で知られ、その映画化作品はアカデミー賞を受賞している。NPRのインタビューで「去った人々の物語はすでに知られている。私が興味を持ったのは、残って生き延びた人々だった」と語った。

もう1冊は、経済史家リアカット・アハメドの『1873: The Rothschilds, the First Great Depression, and the Making of the Modern World』。アハメドは前著『Lords of Finance』で中央銀行家たちが大恐慌を引き起こした過程を描き、2010年にピューリッツァー賞を受賞した。新作では時計の針を半世紀以上巻き戻し、1873年の恐慌と「長期不況」を掘り下げる。嵐の目にいた人間たちを前景に置きつつ、影響が世界中に枝分かれしていく様を追う手法は前著譲りだ。

移民が文字通り「2人の人間」に分裂する世界

イザベル・J・キムのデビュー長編『Sublimation』は、国境を越えた移民が文字通り2人の別人に分裂するSF世界を描く。

「残った自分」と「去った自分」に分かれるこの現象は、作中で「インスタンシング」と呼ばれる。移民が日常的に抱える引き裂かれた感覚を、肉体レベルで可視化した設定だ。韓国に残ったソヨン・キムが、20年ぶりに米国から帰国した「もう1人の自分」と対面するところから物語は動き出す。

歴史の側から移民を描くのが、リサ・シーの『Daughters of the Sun and Moon』だ。舞台は1870年代のロサンゼルス。3人の中国人女性──ペタル、ダヴ、ムーン──が白人住民の敵意にさらされながら暮らすなか、物語は1871年の「恐怖の夜」へと向かう。この事件ではロサンゼルスの中国系移民人口の10%がリンチで殺害された。アハメドの『1873』と同じ時代を扱いながら、権力の中枢とはまったく異なる場所から1870年代を映し出す。

今年の夏は図書館から旅に出る

NPRの選んだ10冊は、1冊ごとに別の時代と大陸へ読者を運ぶ。その最後を飾るのが、アン・パチェットの新作『Whistler』だ。

パチェットは『Bel Canto』『Tom Lake』の著者であり、書店経営者でもある。NPRの書評家に「米国で最も愛される本の人かもしれない」と評された作家の新作は、離婚によって数十年間離れていた娘と義父の再会を描く。感情の断層と時間そのものに引き裂かれながらも、互いを必要とし続ける家族の姿が浮かび上がる。

NPRの6月リスト全10冊は、アイルランドの荒野から近未来の韓国、1870年代のウォール街からロサンゼルスまでを網羅する。今年の夏の旅行計画は、最寄りの図書館のカードを更新するところから始めてもいいかもしれない。