AI検出企業パングラム(Pangram)が主要SNSの約100万投稿を調べたところ、LinkedInでは250語を超える投稿の4割超が「AIが丸ごと執筆」と判定された。主要SNSのなかで最も高い比率だった。
なぜLinkedInが「最もAIまみれのSNS」になったのか
ビジネス人脈SNSのLinkedInには、投稿画面に「Enhance post(投稿を強化)」というAI補助ボタンが標準で埋め込まれている。ワンクリックで文章を整え、生成できる。この手軽さが、大量のAI投稿を生んだ一因とみられる。
数字はその偏りをはっきり示す。今回の調査でLinkedInはスキャン対象全体の約3分の1を占めたにすぎない。それなのに、AIと判定された投稿全体の実に3分の2近くがLinkedIn発だった。プラットフォームの規模に対して、AI率が突出して高いという意味になる。
さらに細かく見ると、LinkedInではトップ投稿(本文)がコメントより1.35倍AIで書かれやすかった。目を引くのはコメント欄のほうで、LinkedInのコメントは、他のSNSの本文投稿よりもAI生成の割合がわずかに高い。ビジネスの発言の場が、隅々までAIに侵食されている構図だ。
約100万投稿が映した「AI slop」の分布
パングラムが調べたのは、Chrome拡張機能の利用者が実際にスクロールした投稿だけだ。この調査は約2カ月かけて行われ、AI検出モデルの誤検出率は0.01%だという。つまりここで見えたのは、スパムサイトの片隅ではなく、人が日常的に眺めるSNSの中心にあるAI生成文だった。
他のプラットフォームも無傷ではない。Xでは長文投稿の4分の1がAIによる完全な執筆と判定され、さらに23%がAIの補助を受けていた。長文系で最もAI率が低かった、ニュースレター配信サービスのSubstackですら、5分の1を超える投稿がAI生成またはAI補助と判定されている。どこを見ても、人間だけが書いた文章を探すほうが難しくなりつつある。
LinkedIn、X、Medium、Reddit、Substack。いずれも、多くのビジネスパーソンが毎日のように開くサービスだ。私たちが「誰かの学びや経験」として読んでいた投稿の相当数が、実は生成モデルの出力だったことになる。
LinkedInはAIに「ブレーキ」をかけられるか
LinkedIn自身も、この流れに危機感を抱いている。同社は5月、AIが書いたとみられる投稿を検出し、フィードでの表示順位を下げる方針を明らかにした。手軽なAIボタンを提供しながら、その氾濫を自ら抑えにかかるという、ねじれたかじ取りだ。
LinkedInの編集部門を統括するローラ・ロレンゼッティ編集長は、「AI slop」と呼ばれる投稿の増加に警鐘を鳴らす。表面は洗練されて見えても、独自の視点や中身を欠いた低労力のAI生成文を指す言葉だという。「AIが自動化された形で大量に使われると、本物の人間同士の対話が生む価値ある洞察が薄まってしまう」と、同氏は投稿で述べている。
皮肉なのは、そのslopを最も大量に生んでいるのが、AIボタンを一番使いやすくしたLinkedIn自身だという点だろう。「Enhance post」ひとつで量産される言葉と、人間だけが差し出せる固有の視点。フィードがどちらを上に押し上げるのか、その答えはまだ出ていないのかもしれない。





