透けて見える参照元、着地点は未知
Ashnymph(アッシュニンフ)はロンドンを拠点とするバンドだ。The Vergeのレビューでテレンス・オブライエンは、彼らを「メジャーブレイクスルーの瀬戸際にいるバンド」と評した。
デビューEP『Childhood』は全5曲で、Bandcampのほか、Spotify、Apple Music、YouTube Musicなど主要プラットフォームで配信されている。クラウトロックの反復リズム(モトリック・ビート)を土台に、インダストリアルの金属的なノイズと80年代ゴスの耽美なヴォーカルを重ね、ポストパンクのギターで束ねる——と説明はできる。だが実際に聴くと、そのどれにも分類しがたい質感が浮かび上がってくるようだ。
5曲が描く音のグラデーション
オープニング曲「Island in the Sky」は、環境音のアンビエントからモトリック・ビートへ移行し、デジタル加工されたヴォーカルとロボティックなグルーヴを展開する。コーラスでは大きなコードが一気に空間を広げる。
ファーストシングル「Saltspreader」は、深い金属的な軋みと打撃音で幕を開ける。シンセのアルペジオがメロディを運び、後半には80年代ゴスのコーラスヴォーカルとディスコ的なストンプが重なっていく。The Vergeは「ダークでダンサブル、完全に耳に残る」と評した。「After Glow」はデペッシュ・モードや、ギター色が強まる前の初期ミニストリーを思わせる。「47」ではインダストリアルビートとノー・ウェイヴ的な不協和ギターが交錯するが、終盤でハーフタイムのグルーヴに切り替わると、ギターメロディの美しさが浮き彫りになる。
ラスト曲「Mr. Invisible」はEP中で最も実験的だろう。操作されたサンプル、判別困難なヴォーカル、執拗なベースの鼓動で構成される前半を経て、後半にはクリアなメロディラインと円環的なギターフレーズが現れる。ポリリズミックなシンセとの絡み合いは「眩暈がするほど爽快」だとオブライエンは書いた。
ジャンルの壁を溶かす5曲の先
Ashnymphの参照元は透けて見える。デペッシュ・モード、初期ミニストリー、スワンズ。だが、そのどれとも違う場所に着地する点が、このバンドの核になっている。
EP1枚、全5曲という分量は物足りなさを残すかもしれない。しかしThe Vergeのオブライエンが「もっと聴きたい、もっと」と書き残したように、その物足りなさ自体がAshnymphの引力だろう。フルアルバムでこの密度がどう展開されるか——次の一手を待つ価値は十分にありそうだ。

