歩道の植え込みが「ミニ生態系」になるまで
ワシントンDCのマウント・プレザント地区では、街路樹の根元を囲む小さな植え込み——「ポケット庭園」が30カ所以上に広がっている。元連邦職員のジョン・バーニムは退職後、ボランティアとしてこれらの庭を手入れしてきた。この日彼が持ち込んだのは、アパラチア山脈原産のマウンテンミントだ。在来植物協会が「今年の植物」に選んだ種で、送粉者にとって最良の選択肢のひとつだという。
地元の非営利団体キャピタル・ネイチャーのステラ・ターナイ事務局長によると、在来植物の根は土壌に空気の通り道を作る。甲虫やミミズなどの土壌生物が集まり、有機物が増え、土の構造そのものが変わっていくという。ゴールデンアレキサンダー、フロックス、オダマキなど四季を通じて咲く在来種が、わずかな面積の中で複層的な生態系を形成している。
農薬漬けの農村より都市が生物多様性の拠点に
MIT環境史学者のケイト・ブラウンは『Tiny Gardens Everywhere』の著者だ。NPRの取材に対し、彼女は多くの都市がすでに生物多様性のホットスポットになりつつあると指摘した。背景にあるのは農村部の環境悪化だ。殺虫剤や除草剤が散布され続ける農地で、鳥も昆虫も居場所を失った。一方、都市部に点在する小さな緑地が彼らの避難所として機能しているとブラウンは語る。
この事実は都市緑化の意味を変える。従来、都市の緑は「失われた自然の代替物」として語られてきた。だが現実には、化学物質に汚染された農村よりも、管理された都市の小緑地のほうが多様な生物を支えられる場合がある。ポケット庭園はその最小単位として機能するようだ。
ヒートアイランド現象の緩和効果も無視できない。バーニムが手入れする区画はアスファルトとコンクリートに囲まれ、周囲より気温が高くなる典型的なヒートアイランドだ。在来植物の蒸散作用と根系による保水が、局所的に気温を下げるとターナイは説明する。
始めるのに広い庭は要らない
「ここは多くの人にとって、酒屋に行く途中で飛び越える中央分離帯にすぎない。でもこの小さな箱の中に、たくさんの命が生まれ始めている」とターナイは語る。都市空間の大部分を人間が占有している以上、ほんの少しを植物や鳥や虫と分け合うのは合理的な発想だろう。
バーニム自身も、世界を変えることの難しさは認めている。だが彼の動機はシンプルだ。「自分の近所にちょっとした喜びを作れないか。それがアイデアなんだ」。必要なのは広い庭ではない。歩道脇の数十センチの土と、かつてその土地に自生していた植物の苗が数株あればいい。

