2026/06/09
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リペアカフェとは壊れた物を無料で直すイベントだ。世界4,000拠点が年85万点を修理

リペアカフェとは壊れた物を無料で直すイベントだ。世界4,000拠点が年85万点を修理

2009年にオランダで生まれたリペアカフェは、2026年時点で世界59,000人以上のメンバーと約4,000の拠点を持つ。年間に修理される品物は85万点近くに上る。

リペアカフェとは何か

専門知識を持つボランティアが近隣住民の壊れた日用品を無料で直すイベントだ。家電、衣類、宝飾品から古い写真の修復まで幅広く対応しており、作業代はすべて無料で、部品代のみ持参者が負担する。

オランダのジャーナリスト、マルティン・ポストマが2009年にアムステルダムで第1回を開催した。「捨てずに直す」という思想のもと、一つの草の根イベントが世界的な非営利団体へと成長した。米ビジネス誌『Fast Company』の報道によると、米国ニューヨーク州の大学町ニュー・パルツで開かれたイベントでは、50人が85点の品物を持ち込み、71点が修復された。アンティークの扇風機、家族の古い写真、動かなくなった宝飾品と、持ち込まれる品物は多種多様だ。

ポストマは「リペアカフェ1つで問題が解決するわけではない。それでも、もっと大きなレベルでの変化が必要だという明確なサインになる」と語っている。

「買わない」が経済を動かす

リペアカフェの広がりには、現代の物価上昇という現実的な背景がある。製造コストの高止まりが続く中、「修理より買い替えが安い」という常識が崩れ始めているためだ。

ニュー・パルツの主催者ホリー・シェーダーは「参加する最初のきっかけはお金への意識や思い出の品への愛着かもしれない。でも、それ以上に人々が一緒に作業し、ものの寿命を延ばす機会になっている」と話す。クリエイティブ・アーツ大学(英国ファーナム)でリペアカフェを研究するエンジニアのピーター・カウンターは「自分のものを直せるという感覚が薄れたのは、技術が世代を超えて受け継がれなくなったからだ」と指摘する。コミュニティ修理が成立するのは、ボランティアが時間を提供するからこそだという。

反消費主義の波はリペアカフェだけではない。2013年に米国ワシントン州で始まった「Buy Nothing Project」は、フェイスブック上だけで1,250万人のネットワークを持ち、地域内でものを無償でやりとりする贈与経済を実践している。「修理する権利(Right to Repair)」を求める立法運動も、複数の米国州で前進した。創設者のリーズル・クラークは「社会運動だったものが、今では何百万人ものセーフティネットになった」と語る。

時計の針が動いた日

リペアカフェの真価は、修理された品物の数だけでは測れない。修理の場は同時に、世代を超えた技術の継承とコミュニティの接点になっている。

ニュー・パルツのイベントで、79歳のポーラ・ワインスタインが持ち込んだのは1930年代製のハモンド時計だった。担当したのは82歳の元IBM電気技術者、ボブ・モートン。「まだ脳が働いてくれていることに感謝している。誰かの役に立てる機会だ」と話す彼は、数時間をかけて時計と向き合った。止まっていた針が動き始めた瞬間、ワインスタインは「動いた!本当にありがとう!」と叫んだ。

ボランティアたちが語るのは、修理の喜びに加えて「人に会える」こと。技術者の傍らで作業を見た参加者が、次の回には自分で道具を手にする。こうした場面が世界4,000カ所で週末ごとに繰り返されている。ポストマが「明確なサイン」と呼んだ第1回から17年。1930年代の時計の針を動かした82歳の技術者のように、「修理する文化」は少しずつ、しかし確かに前進しているのかもしれない。