2026/05/25
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トニー・レオン欧州初主演作、200年のイチョウが3つの時代を繋ぐ

トニー・レオン欧州初主演作、200年のイチョウが3つの時代を繋ぐ

1本の木、3つの時代、3人のアウトサイダー

ハンガリーの映画監督イルディコー・エニェディの新作『Silent Friend』は、ドイツ・マルブルク大学を舞台に3つの時代を描く。物語を貫くのは、キャンパスに立つ樹齢約200年のイチョウだ。この木こそが、すべての時代に登場する唯一の「登場人物」として存在し続けている。

2020年のパートでは、トニー・レオンが演じる神経科学者トニーが、コロナ禍で閑散としたキャンパスに取り残される。孤独の中で彼が出会ったのは、レア・セドゥ演じるフランス人植物学者アリスのオンライン講義だった。植物には高度な意識があるという彼女の理論に触発され、トニーはイチョウの葉と幹にセンサーを取り付け、木が何を「伝えよう」としているかを解読する実験を始める。

100年前の女性、70年代の青年——それぞれの「観察」

1908年のパートでは、マルブルク大学初の女子学生グレーテ(ルナ・ヴェドラー)が登場する。男性教授たちの露骨な見下しに耐えながら植物学を学ぶ彼女は、写真家としての訓練を通じて、花や果実への独自の審美眼を育てていった。

1972年のパートで描かれるのは、ルームメイトのゼラニウムを預かった青年ハネス(エンツォ・ブルム)だ。刺激に対する花の反応を観察する彼の行為は、2020年のトニーの実験の原始的な先駆けだったと言える。3人に共通するのは、いずれも社会の周縁にいるアウトサイダーであり、科学を通じて「目に見えるもの」の境界を押し広げようとした点だろう。

映像スタイルが語る「見る技術」の変遷

NPRのジャスティン・チャンによるレビューが指摘するように、エニェディ監督は3つの時代にそれぞれ異なる映像スタイルを与えた。1908年はモノクロフィルム、1972年は温かみのある粒子の粗いカラーフィルム、2020年はクールな高精細デジタルで撮影されている。

この演出は単なる時代考証の域を超えるだろう。各時代の「見る技術」そのものが、人間と自然の関係を規定してきたというメッセージが読み取れる。写真術が植物の美を切り取り、アナログな観察がゼラニウムの反応を記録し、デジタルセンサーがイチョウの「声」をデータ化する。技術が精緻になるほど、人間は植物に近づけるのか、それとも遠ざかるのか——映画はその問いを観客に委ねている。

「観察される側」に立ってみる

エニェディ監督は2017年のオスカー候補作『心と体と』で、屠畜場の2人の労働者が夢の中で出会うという物語を描いた。現実と非現実の境界を溶かす手つきは『Silent Friend』でも健在だ。窓の外の木やベランダのゼラニウムが「あなたを観察しているかもしれない」という着想は、SF的な恐怖ではなく、自然との親密さとして提示される。

トニー・レオンにとって本作は初の本格的な欧州映画出演となる。香港映画界のスターがほぼ無人のドイツの大学キャンパスで木と向き合う——その画だけでも、従来のアートハウス映画の枠を超えた引力がある。次に窓の外の木を見上げるとき、その木もまた200年分の記憶であなたを見つめ返しているのかもしれない。